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最高裁判所第三小法廷 昭和29年(あ)3831号 決定 1957年4月16日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人田中節治の上告趣意について。

論旨(一)、(三)は事実誤認及び量刑不当の主張であって刑訴四〇五条の上告理由に当らない。次に論旨(二)について案ずるに、原判決の支持した一審判決が適法に認定した事実は、被告人は判示の日時に勝部弘道、中川光威から判示の映写機四台の売却方を依頼され、右映写機四台が全部賍物であることの情を知りながら、夏目恵一外二名と共謀の上直ちにこれを鳥取市から判示の場所まで運搬した上、判示日時に判示場所で右四台の内判示の二台を同人等をして判示の浜村正男に判示の代金で売却させたが、残りの二台については、売却などの周旋ができなかったということである。右認定事実によれば、被告人の右行為はこれを包括的に観察して賍物運搬牙保罪の包括一罪として処断さるべきである。原判決が被告人の右行為を目して賍物運搬罪と賍物牙保罪の二罪が成立すると判示したのは刑法二五六条二項の解釈を誤ったもので、原判決には法令違反の違法がある。しかし、原判決は結論として一審判決(同判決は賍物牙保罪の一罪の成立を判示している)を肯認しているのであるから、原判決の右法令違反は結局判決に影響を及ぼすものでない。従って原判決には法令違反があるから破棄さるべきだとの論旨も採用できない。また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 高橋潔 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 垂水克己)

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